From: naot@kodama.issp.u-tokyo.ac.jp (Nao TAKESHITA)
Subject: Re: あけちゃだめです
Message-ID: <71mc9f$msl@t-server.t.u-tokyo.ac.jp>
Organization: ISSP, University of Tokyo
Newsgroups: fj.rec.autos
Date: 3 Nov 1998 07:44:47 GMT
References: <363D3B4E.92860DD@geocities.co.jp>

竹下@物性研ともうします。祝日なんでフォローします:-)
ついでに、今日はとても天気がいいので長文です。(笑)

In article <363D3B4E.92860DD@geocities.co.jp>, oumi2@geocities.co.jp says...

>馬力とトルク....ああ言ってしまった。
>どなたかこの違いをわかりやすく説明できる方が
>いらっしゃったら、わたくしめにお教え願えませんか?

いま目の前に棒があります。これを握りしめて
ひねることにしましょう。で、パパの威厳を示すためには
子供よりも力が強いことを示すためにどのくらいの力でひねったか、
何か数値に表したいですね。どうすればいいでしょう?

────┬─────────(←ここをひねる)
   (│
   1m│
   (│

そのために、棒に直角に長さ1mの棒を固定します。
で、その先にはかりを置くことにしましょう。
で、棒を力一杯ひねってはかりが1kgを指したとします。
このときのひねる力(トルク)を
1kg・m
と呼ぶことにしましょう。当然てこの原理からいって
固定した棒の長さが1cmで有ればはかりは100kgを指すと
思います。つまり1kg・m=100kg・cmですね。

次に棒の代わりに半径1mの滑車が固定されているとします。
そして滑車のまわりにヒモが固定されていて、その先に1kgの
おもりが着いています。これを回らないように支えるのに
必要な手の力は、先程のはかりが1kgを指すのに必要だった
ひねりの力と同じですよね?

じゃ、手で持ってるのはしんどいから、棒の先を
クルマのブレーキみたいに、ディスクを付けて
そこをディスクブレーキではさんでとめることにしましょう。
これなら楽でいいです。

いまこのブレーキで棒の回転をとめようとする力は
ブレーキのペダルを踏む力に依存するだけで、
特に棒がどのくらいの早さで回っているかは関係ないですよね?
だって、クルマで走っているとき、同じ力でブレーキを
踏んでいたら、スピードがいくらだろうと大体同じくらいの
減速Gを感じて止まっていきますよねえ。

ということはです、この棒をひねろうとする力、トルクは
棒の回るスピードとは特に関係ないと言うことが分かりました。
回転数とは関係のない、ひねろうとする力、これがトルクです。

次は、再びブレーキをはずして手で握りなおします。
いま、同じように1kgのおもりが着いた状態になっています。
これを気合いを込めて、がんがんひねることにしましょう。
これもやはりパパの威厳を示すため、子供よりも
力が強いことを示すために、何らかの数値で表したいですね:-)

でもこれは簡単そうですね。同じおもりを1秒間に
どれだけの高さ持ち上げることができたかを
記録すればいいでしょう。というわけで、突然ですが(笑)
おもりを(だいたい)75kgの重いものに換えて、この状態で
1秒間に1m持ち上げたとき、1馬力と呼ぶことにしましょう。
2m持ち上げることだ出きれば2馬力だし、おもりを
150kgに換えて1秒で1m持ち上げることができても
2馬力ですね。(だって滑車を半径50cmに換えれば同じでしょ?)

最後にクルマに話を戻しましょう。クルマでいま傾きが一定の
坂道を上っています。ギアは固定でアクセル全開。
速度もこれ以上は上がらないようで、一定になっています。

なぜこれ以上速度が上がらないのでしょうか。
これはエンジン(から伝えられた)のタイヤを回そうと車軸を
ひねる力、すなわちトルク、と坂道がクルマを押し下げようとする力
(言い換えればこの坂道で静止した状態のクルマが
下がらないように支えるのに必要な車軸をひねる力)
がちょうど釣り合っているから、それ以上速度が上がりも
しなければ下がりもしないわけですね。いま走っている速度は
どこにも関係してきません。

ということはいま坂道でなくて、平地を走っていて
ギア固定でアクセル全開だとすると、平地なので
支えるのに必要なトルクは0ですから、タイヤに伝えられた
トルクは全て加速に使われますね。ですからこういう
3速全開加速なんかをすると、特にそのときの
速度とは関係なく(実際はそうでもないけど)そのときの
エンジンのトルクに応じて加速度が感じられるはずです。

話は又坂道に戻って、いま1秒で標高が1mずつ登っているとします。
クルマは何故かアルトワークスなのでドライバーを含んで
750kgほどのようです。このときはエンジンはおそらく
10馬力くらいを発生していることになりますよね。
(もうちょっと出るはずですね。なんか調子悪いのでしょうか:-))

この場合は逆に坂の傾斜がいくらであるか、とかは関係ないですね。
1秒間に標高がいくら上がったのか?と言うことしか関係していません。
低いギアを使えばすごい傾斜の道も上がれるであろうし
高いギアでも傾斜が緩ければ低いギアの時よりもずっと速い速度で
上れるでしょうが、そのことはいま特に関係ないですね。
750kgのクルマが1秒間に何m標高が高くなったか、ということが
発生している馬力を表しています。

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Nao TAKESHITA / 竹下 直 / naot@kodama.issp.u-tokyo.ac.jp